ピロリ菌とは
ヒト
の胃の粘膜
上皮に生息する菌で、胃十二指腸潰瘍、胃癌の発生に密接に関連しています。感染経路は経口感染で、家バエなどの媒介感染も指摘されています。以前は不完全
に処理された生活用水に混入したピロリ菌による感染が疑われていましたが、衛生環境がよくなった現在では、ピロリ菌感染者の唾液を介した感染が考えられて
います。ピロリ菌の感染獲得時期については、胃酸の分泌や胃粘膜の免疫能の働きが不十分な幼小児期に成立すると考えられています。この幼小児期の感染経路
の大きな要因として、離乳食が開始される生後4〜8か月の時期の保護者による'離乳食を噛んで与える行為'が考えられています。なお、成人における感染は
急性胃粘膜病変を起こすことはありますが、一過性感染で終わる可能性が高いと考えられています。日本人では40才以上で70〜80%に感染が認められてい
ます。
ピロリ菌感染の検査は
・迅
速ウレアーゼ試験(胃カメラでの組織採取)
・培養法(胃カメラでの組織採取)
・鏡検法(胃カメラでの組織採取)
・尿素呼気試験
・便中抗原測定
・血中抗体測定
当院ではすべての検査を受けていただくことが出来ます。
ピロリ菌除菌治療とは
除菌
治療として
パリエット20mg、サワシリン1500mg、クラリス400mgを1週間内服します。約80%で除菌が成功しますが、除菌の不成功例は、ほとんどがクラ
リスに対して耐性のH.pyloriの存在が原因です。除菌不成功例に対して、もう一度同じ薬で除菌を試みると、その成功率は30%ほどです。
そこで、除菌不成功例に対しては、二次除菌としてパリエット20mg、サワシリン1500mg、フラジール(メトロニダゾール)500mgの3剤による
除菌療法を行います。このクラリスをメトロニダゾールに変更した方法で、二次除菌として約80%以上の除菌成功率があります。
除菌治療の副作用は
数%
に下痢、発
熱、発疹、喉頭浮腫、出血性腸炎等の副作用が発生するといわれていますが、当院では、下痢が唯一の副作用の発生報告となっています。また、二次除菌で使う
メトロニダゾールは飲酒により、腹痛、ほてり、嘔吐などが現れるといわれていますので、メトロニダゾール内服中は飲酒を避ける必要があります。
除菌治療後の問題点
除菌
後、約
10%程度の症例に逆流性食道炎や胃・十二指腸びらんがおこる場合があります。しかし、症状は軽微です。また、1ヶ月以内の発生が80%程度であり、6ヶ
月以内にはほとんど消失している場合が多いといわれています。したがって、これらは一過性であり自覚症状もほとんどなく、臨床的には問題のないものと考え
られています。
除菌治療の適応疾患は
1)胃潰瘍、十二指腸潰瘍
2)胃MALTリンパ腫
3)早期胃癌に対する粘膜切除後
4)萎縮性胃炎
5)胃過形成性ポリープ
6)機能性胃腸症
7)胃食道逆流症
8)消化器以外の疾患(突発性血小板減少性紫斑病、鉄
欠乏性貧血、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など)