定年まで病院事務長

記事3

平成18年2月8日 (北国新聞掲載)

金沢市有松2丁目の住宅街にあるマンション。
60〜70代の男女が頻繁に出入りする一室がある。

2LDKの室内には、マッサージいすに横たわる女性。パソコンではがきを書く男性。和室で手芸にいそしむ女性グループ。

笑い声の絶えないこの部屋は
NPO法人「おいお〜い健康塾」のサロンである。

塾の仕掛け人は金沢市三馬1丁目、村中郁夫さん(68)。
2002(平成14年)12月に定年退職するまで病院事務長を20年間務める。
職場で患者さんと接しているうちに、寝たきりや認知症には必ず前触れがあり、その前触れは本人や身近なで接している家族よりも、同年代の友人の方が気づきやすいことを知った。現役時代に仕事一途だった男性ほど、退職後は地域に溶け込めず、「テレビの番人」となって体調を崩す。そんな姿を何度も見てきた。
「健康について学べて、病気の前触れを互いにキャッチし合える。好きなときに出入りできる、そんなたまり場が定年退職者にこそ必要だと思ったんですよ」。

知恵を出し合う

村中さんが現役時代の人脈を生かし、定年退職した看護師や管理栄養士に声をかけたところ、設立前に既に80人近くの会員が集まった。04年1月に「おいお〜い健康塾」が発足し、05年10月にNPO法人として認証された。
60歳以上は6千円、59歳以下は1万円の年会費を払って活動する会員制をとっている。 サロンは日曜、祭日と水曜以外の午前9時から午後4時まで利用できる。
 風邪をひいたときの食事や体調のちょっとした変化について元看護師や栄養士に相談する人もいれば、宅地建物取引主任者の資格を持つ村中さんに土地建物の処分について智恵を借りる人もいる。それぞれの人生で培った豊かな経験や知識が十分に生かされている

目指すは引きこもりゼロ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              

会員の発案で、囲碁、将棋や茶道、書道、手芸などの講座が始まったほか、パソコン、デジカメの操作の習得や成年後見制度の勉強会、マージャン大会、、ゴルフコ大会など活動の幅は広がる一方だ。 「会員の誰もが先生になり、だれもが生徒になる。話し合い、教え合う仲間がいれば、一人で家に引きこもることもなくなる」。
村中さん自身、この塾でデジカメを知り、写真入りの会報をパソコンで編集するまでになった。 事務仕事を引き受けてサロンに日参するほか、退職後のたまり場の効用を後援するなど現役並みの忙しい日々を過ごしている。
「どんどん増やす」
設立3年目の今年、会員数は150人を超えた。 「法人」となったことで、私の体力がなくなったとしても他の人が理事長を受け継いで塾が存続する見通しも立った。会員をどんどん増やして、金沢を引きこもり老人ゼロの町にすることが私の夢です。